建学の精神
21世紀の国際社会は、グローバル化と情報化が加速する一方で、政治・経済・社会・文化のあらゆる面において、解決すべき人類共通の課題にも直面しています。とりわけ東アジアは、その集約的な地域のひとつとしてダイナミックな変化が予見される歴史的な転換期にあります。
こうした時代状況を未来に向けて切り拓いていくためには、なにより個性と多様性の尊重を基礎とした創造力の溢れる人間が求められています。言い換えれば、柔軟な発想と幅広いコミュニケーション能力を兼ね備え、問題解決能力に優れた人間の育成にほかなりません。
コリア国際学園(KIS)は、在日コリアンをはじめとする多様な文化的背景を持つ生徒たちが、自らのアイデンティ ティについて自由に考え学ぶことができ、かつ確かな学力と豊かな個性を持った創造的人間として複数の国家・境界をまたぎ活躍できる、いわば「越境人」の育成を目指します。
教育理念
多文化共生
民族的アイデンティティと自尊感情を育むとともに、多文化共生社会の実現に向けた知識、技能、態度を身につけた人間を育成する。人権と平和
人間の尊厳と民主主義を尊重し、世界平和を希求する普遍的価値を創造するとともに、地球的視野を持ち、持続可能な社会の構築に貢献できる人間を育成する。自由と創造
真の自由を理解し、豊かな個性と多様性を基礎とした創造力の溢れる人間を育成する。校長挨拶
冒険のように
人生を切り拓いていける力を!
コリア国際学園長東部高等部
校長 金正泰
「越境人」の育成を建学の精神にかかげたコリア国際学園が設立されたのは今から約10年前、21世紀が始まってまだ間もない頃です。20世紀の激動の歴史の中で国境を超えて生きざるを得なかった在日コリアンの人生の教訓から、「3言語」と「世界で活躍できる力」を育成することを目標としたコリア国際学園が設立されました。
コリア国際学園では「3言語」や「世界で活躍できる力」と言う言葉を少し不自然に感じるようになってきました。なぜなら学園内ではコリア語、英語、中国語、日本語が自然に飛び交い、生徒たちは韓国、カナダなどを訪れ、そこでできた友だちとコリア語、英語で話します。地理的・文化的境界を訪れ、その地の歴史と文化に触れ、共生について体験的に考えます。卒業生たちは日本、韓国、アメリカ、イギリス、カナダ、中国、インド、マレーシア、フィリピンなど世界のあちこちで活躍しています。コリア国際学園の生徒たちにとって、すでに多言語は特別なことではなく、世界は自分たちが生きていくフィールドに過ぎないのです。
学園には日本人、在日コリアン、韓国人、中国人の生徒たちがいますが国籍、民族、文化はさらに多様です。言わば小さな多文化社会がすでに出来上がっています。生徒たちはそのような環境の中で生じる様々な問題に日々向き合いながら学んでいます。そのような学園生活の中で言語力、コミュニケーション力、論理的思考力の必要性を実感し、行動することの重要性を理解するようになります。
人類の歴史は、人には与えられた状況に甘んじることなく、時には環境に適応し、時には状況を打ち破る力があることを教えてくれています。私たち大人ができることは未来を担う子どもたちが、人が本来持っている力を発揮できる環境を作ることだと思っています。コリア国際学園は生徒たちがしっかりと学び、深く丁寧に思考し、それを実践していける環境を作ることに力を入れています。
科学技術の発展により第4次産業革命が叫ばれる中、国際情勢や経済構造はダイナミックに変化し、人々の生活にも大きな変化をもたらします。そのような社会で我が身の幸せだけでなく、人類の繁栄と正義のために生きる優しさと思いやりを持って欲しい。どのような状況であれ、冒険のように人生を切り開き、楽しめる力としなやかさを持って欲しい。
コリア国際学園はこのような教育を目指します。
KISが目指すもの
建学の精神と教育理念を現場の教育活動に落とし込み
それを常に模索し、変化し続けています。
コリア国際学園は2008年に設立されたコリア系インターナショナルスクールです。中学校・高等学校に相当する生徒たちが通っています。中等部1年から、高等部3年まで、1学年1学級の小さな学校ですが、学校の建学の精神である「越境人」を目指し、大きな夢を抱いて学んでいます。
2020年度の在校生の国籍は日本・韓国・中国・アメリカ。日本国籍者の中にはコリアにルーツを持つ生徒もいます。また、韓国籍者も日本で生まれ育った「在日コリアン」もいれば、韓国からの留学生もいます。中国からの留学生は漢族も朝鮮族もいます。先生たちも日本人、韓国人、アメリカ人、中国人と多様です。
国籍、民族、文化、生活習慣、生まれ育った場所が違う生徒たち、複合的なアイデンティティを持つ生徒たちが混在しています。そんな、生徒たち一人ひとりを大切にしながら、多文化社会を生きていくための志と能力を育み、世界中のどこでも生きていける強さと優しさを持ったグローバル人材を目指しています。
2020年度の初めは新型コロナウィルスの感染拡大によって、世界中が大きな悲しみと不安に包まれました。コリア国際学園では「生徒・教職員の健康と安全」、「学びの継続」をスローガンに、生徒、保護者、教職員が一体となって春休み中にオンライン教育活動の体制を組み、日本・韓国・中国に住む生徒たちが、時間と空間を超えて学びあいを実践しました。
コリア国際学園の建学の精神「越境人の育成」は普遍的な教育理念であり、それを実践する教育内容や方法は時代や環境とともに常に変化します。コリア国際学園自体も、その時代の「越境人」を常に模索し、時代と社会の要請に敏感に応えていける強さと柔軟さを備えた学園を目指します。
KISの価値観と教育実践の原則
多文化社会とはどのような社会なのか。
多文化社会で大切なことはなにか。
多様な文化的背景と価値観を持つ人たちが集まったKISでは、毎日が文化的葛藤と解決に向けた取り組みの連続でした。その中で私たちが感じたことは、「多文化共生はそんなに簡単ではない」ということです。KISの歴史の中で苦しみや、痛みをともなうこともありましたが、その成長の中で私たちが得たものが、個性の尊重を前提としたグローバル社会の在り方です。
それは、言葉だけのきれいごとではなく、「ルールとモラルと仕組みをつくること」でした。これが、誰一人として取り残すことのない多文化社会に向けたKISの取り組みです。


人(社会と自然含む)・多様性・学びの尊重
自由と責任
人が多様化し、時代が変わることで、新しい課題や、解決すべき問題が生まれます。その時に、判断基準とするものがKISの価値観「人・多様性・学びの尊重」です。そして、教育活動を実践する際の原則が「自由と責任」です。
自由の無いところで自由を尊重する心は生まれず、責任のないところで責任感は育ちません。
KISには
人を大切にする自由はありますが、人を傷つける自由はありません。
人と違う自由はありますが、人と違うことを責める自由はありません。
一生懸命学ぶ自由がありますが、学ばない自由はありません。
これが価値観と原則の関係です。
2020年度に取り組んでいるもの
①共有するルールのハードは下げて、具体的にすること。教務規定・学校生活のしおり・進路指導規定を改定し、指導処分規定を策定しました。学びに関する規定をしっかりと見直しました。服装や頭髪などのルールは無くしました。もちろん、制服を着る自由もあります。
②学校便覧、学校教育計画は日本語版、コリア語版、中国語版を作りました。みんなが共有すべきルールをしっかりと理解するためです。ルールにないことで人を責めることはできません。
③生徒・保護者・教職員・理事・教育専門家・地域住民で構成される教育評価諮問会議を設けました。年に2回、学校教育活動を振り返り、みんなが共有するルールを見直します。
学校沿革

2005年 | 1月 | 故金敬得弁護士氏から学校設立構想の提案 |
2006年 | 3月 | 設立準備委員会が発足 |
2007年 | 2月 | 大阪のシンポジウムで建学の精神、理念を発表 |
5月 | 大阪で設立発起人・賛同人の集い。約120名が参加 | |
2008年 | 4月 | 第1回入学式。新入生26人が入学(中等部10人、高等部16人) |
8月 | 校舎竣工 | |
2011年 | 2月 | 第一回卒業式 9人が卒業 |
3月 | 大阪府から学校法人及び各種学校の認可おりる | |
12月 | 高校無償化対象校となり、文科省から就学支援金の支給開始 | |
2012年 | 4月 | 国連教育科学文化機関からユネスコスクールに認定 |
2013年 | 9月 | 後援会の設立総会。会長に作詞・作曲家の中村泰士氏 |
2014年 | 10月 | 国際バカロレアの認可を申請 |
2015年 | 1月 | 国際バカロレアの候補校 |
2017年 | 10月 | 国際バカロレアの認定校 |
2018年 | 4月 | 開校10周年 |