プロジェクト型の学びや特別授業などを実施するKIS土曜学校が、7月12日(土)に実施されました。
今回は大阪大学未来共生イノベーター博士課程プログラム特任教授の脇阪紀行先生をお招きして、「平和とは、そして越境人とはーアジアと欧州の特派員経験を通して」と題した特別授業を行ないました。
脇阪先生は、朝日新聞でのタイやベルギー・ブリュッセルなどの特派員や論説委員の経歴を自己紹介したあと、生徒たちに「平和って何だろう」「国際社会での平和って何だろう」と問いかけることから、授業は始まりました。
ブリュッセルに本部があるEU(欧州連合)についてパワーポイントで示しながら、現在加盟国が28カ国であること、公用語は24言語であり、そのために翻訳者2300人、通訳者3600人を配置していること、予算の1%を多言語主義の運営に充てていることなど、興味深い内容を紹介されました。
こうした地域統合の背景には欧州での過酷な戦争の経験があり、統合に大きな歴史的役割を果たした、いわば欧州の「越境人」ともいえるジャンモネの存在や欧州大学院大学で学ぶ国境を越えた若者たちのネットワークについても言及されました。
授業の後半では、カンボジアの内戦の爪痕として虐殺の実態や地雷除去活動についても語られました。
生徒たちからは、特派員時代の仕事や言葉の問題、欧州統合に関わる葛藤や対立についてなど多くの質問が出されました。
最後に、脇阪先生は将来の東アジア共同体の形成を視野にいれ「リードしていくのは政治指導者かもしれないが、それを支える人々がいかに多くいるのかが大切。
KISでの語学の勉強や様々な経験が、10年後、20年・30年後に必ず効いてくる。
幅のある教養を身について欲しい」と生徒たちを激励して授業を終えました。