#435 「早すぎる」学校
2009-10-25 号
寺脇 研(NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター)
前回書いたように、日本の新政権誕生がアジアとの新しい関係を作っていくだろう予感が高まりつつあります。
日本人のわたしたちだけが感じているのでなく、韓国をはじめとするアジアの国々の人々が期待を寄せている点は特筆されるべきでしょう。
アジアが、まず日本、南北朝鮮、中国の東アジアから共同体意識を育み、やがてそれが全体に広がるアジア共同体構想が、現実のものとして考えられ始めました。
ヨーロッパがEUを作ることによって平和と協調・共生を進めているように、アジアにもそれは可能なはずです。
そうした展望が広がることは、わたしたちが作ってきたコリア国際学園(KIS)のような学校にとって朗報です。
この学校については#410でご紹介しました。昨年の4月に開校し、中学生と高校生に当たる年齢の生徒たちが、「アジアを支える越境人」となることを目指して学んでいます。
わたしも理事のひとりとして名を連ね、この学校を成功させるために力を尽くしているところです。
【改めてホームページを掲げます。 https://kiskorea.ed.jp/ 】
プサンから帰ってすぐの10月17日、大阪府茨木市にあるKISを訪ねました。
この日は、この学校に子どもさんを預けてくれている保護者の皆さんの集まりがあり、そこで話をしてほしいと頼まれたのです。
皆さんの前で、わたしは前回コラムで書いたようなことを話し、「早すぎる」学校であるKISに時代が追いついて来ている、そのスピードは思っていたより速い、と言いました。
KISは早すぎる学校です。
だって、その理念である東アジアの結びつきは、遙か遠いことのように思われてきていました。
理想はいいけど、現実はね… という声が普通です。
しかし、今ここで学んでいる十代の少年少女が社会を担う年齢になるのは20年か30年後になります。
それを見越して、「早すぎる」学校は必要なのです。
思えば、吉田松陰の作った有名な松下村塾だって、「早すぎる」学校でした。
あまりにも先を行く思想だったために、吉田松陰は幕府に捕らわれ死刑になります。
でも、そこで学んだ若者たちは、松陰の死後10年経って実現した明治維新や、明治新政府の中で極めて大きな役割を果たしました。
普通の学校は、現在に視線を向けます。
いや、どうかすれば過去に視線を向けて、これまでこれで成功したから同じようにやればいい、という教育を行ったりします。
過去はちょっと困りますが、学校が現在を見据えることはたしかに重要です。けれども、いくつかの学校は遠く未来を想い、そこで活躍する人間を作ることを志してもいいではありませんか。
https://www.mammo.tv/column/ken_terawaki/20091025.html